すきなものごと

不定期で金曜日、21:00更新。車いすダンサーです。HP:watername.net

うみ(短文)

とぷん、と、海にもぐる。 ずいぶんながいこと、海を泳いでいたから息継ぎを、しなくてもふかくまで潜れるようになった、 ふかくへゆけばゆくほど、気配はすくなくなった。水面のちかくでは、ゆらゆらと、 海の底にねころがって、水面にゆれるひかりを、なが…

なみとなみだ(B2F)(短文)

なみだでいっぱいになった部屋、は、なかなかひらかなかった。それは外から開くことができるものではなかったから、ノブを数回まわす、それが星になって、なみだをゆらしていた。★みずうみは、森の深くにあった。湖面はとうめいにゆれていて、そばには角が生…

ちいさな動物たち(短文)

「壁の向こうには、ちいさな動物たちがいるんだよ。」 壁のこちら側で、秋色の葉っぱをふみしめながら、彼はつぶやいた。真っ白な髪の毛と、皺を刻んだ白い肌。長い時間をかけてゆらいだまなざしは深い色をしていて、みつめていると、とてもおおきいものをな…

川上弘美さんについて

先にことわっておきますが、全巻読破していないし、あくまでわたしがこうおもう、というやつです!いちばん最初によんだのは、「センセイの鞄」だったとおもいます。表紙とタイトルのなんとなくで買った、いわゆるジャケ買いですね。飲み友だちであるところ…

記憶の不確かさ

ちょっとまえに、スタバの抹茶ラテをシロップ抜きでのんだんですが(スタバのドリンクって、なんであんなにもあまいのでしょうか!)、ちゃんとお抹茶の味がして、お茶をならっていたのはほんとうにちいさいころ、まだ祖母が生きていた頃の話だから、かなり…

非在の言前

言葉にたいする、もやもやとした違和感に「こういうことか!」とおもったのは、丸山圭三郎さんの本を読んだときです。題は、丸山さんの本より。非在、が存在になる過程に、「言葉になる(言葉にする)」があります。いまはすべてのものに名前がついていて、…

へや(短文)

細い細い道をぬけてゆくと、何度かの分岐とカーブのあとにその場所はあった。今度こそは、たどりつけないはずだとおもうのに、なんどくりかえしてもその場所に、たどりついてしまう。 ドアをあけて、深くかぶっていたフードをおろして、目をあげるとオレンジ…