本番のあと疲れ果てて数時間ねむって、目がさめてぼんやりと、煙草を吸っていたとき、
ふかくふかくねむってたから、どこかがすごくクリアで、でもどこかがぼんやりしていて、異次元にいるみたいで。泡みたいに浮かんできたその感触、が、ゆっくりしずかに、とてもあたたかかったです。
ひとりで、比較を前提に、踊るような場所でした。これまでは、気持ち的にもからだのことでも、ある程度保障されている場所でばかりおどっていたから、
練習しているあいだ、何度も逃げ出したくなった。でも、今のわたしに出来るぜんぶを、やりたかった。
自分のよわいところや、こわいものを、じっと見つめるようなことが必要でした。逃げるのは得意だから、逃げようとおもえば簡単で、だけれどそうしたくなくて。
変なたとえかもしれませんけれど、くらいくらい墓地へひとりきりでいって、いちばん奥にある石をとって、かえってくるようなこと、
ちゃんとひろってこられて、よかった。
けっこうまえのこと。友だちが「もう、暗いのは飽きた」っていったときに、わたしはすこし、さみしかった。
いちばん大事なものは、過去のなかにあって、あるときは煙草を吸いながら、あるときはお酒を飲みながら、お互いの見ていたもの、を、交換するようなことを、していた頃のこと。それはもう、どこにもないんだけれど、どうしたって自分の中心にあったから、
「失くした」という感覚を交換することが、必要な時期がありました。そういう時期を、すごした子がもう、立ち上がって歩いていこうとしていることが、わたしはきっと、さみしかった。
繰り返していればいいじゃないか、とおもっていました。馴染んだものに囲まれて、それでいいじゃないかって、
でも結局、わたしもそうしなかった。いくつもの出会いが、あったからだと思います。
なにかをかたちにする、っていうのは、それとはまた、別のことです。でも全然別でもなくて、同時に存在していて、別次元にあるような。からだの感覚と、頭で考えることと、の対比に、すこし似てるかも。
いっこずつ、いっこずつ。ちいさくあったかいもの、が、いろいろを教えてくれたらいいな、とおもいます。おわり。
○。きょうの一曲。○