なみだでいっぱいになった部屋、は、なかなかひらかなかった。
それは外から開くことができるものではなかったから、ノブを数回まわす、
それが星になって、なみだをゆらしていた。
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みずうみは、森の深くにあった。
湖面はとうめいにゆれていて、そばには角が生えた白い馬、と、白くやわらかな服を着た子どもがいた、
それらはふたつとも、おなじものだった。みずに触れることはなく、ただゆれる波紋をながめていた。
時間はめぐる。だけれど、時間の輪はとじたままだったからそこはいつでも、晴れた春の日のままだった、
空はいつでも、抜けるように青かった。雲はおなじかたちのままで、動きを止めていた。みずうみだけが、息をしていた。
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みずは、隠された場所にあった。それらはながれる空気にはふれないものだった、まんいちすがたをあらわしても、それらは別のものにかたちを変える。そういうまじないが、かけられていた。
たとえば宇宙の向こう側にある星に、ゆれるものをほんとうには、たしかめられないのとおなじように、
それらは忘れ去られた場所で、みずをゆらしている。最後のちかく、それには、海というなまえが、つけられていた。
みずはただ、おなじようにゆれていた。ながれてゆく時間の先でも、それらはただゆれているのだった。とどめ置く場所のちがいが、なみだになりみずうみになり、海になり空になった。
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みずを失ったひとたちについてのこと。あるいは、忘却したひとたちのこと。
永久機関がなければ動力はまわらない。だからそれは失われるものでは、ないのだけれど、
みずが別のものに変質することがあった。それらを濾過するには、木立が雫を落とすための膨大な時間が、必要だったから。
濾過する代わりに、汲み出そうとするのだった。よそで汲み出したものは、次元を超えたときに変質する。だからそれがうまくいくことは、なかったのだけれど、
色はふたつをまぜると、虹のようになった。(ガソリンをうかべたみずたまり、のように)それには「透明」というなまえが、ついていた。
そのものとしてのみず、は、いつでもそこにあった。変質したとしても「とうめい」だったけれど、
それにはめかくしが、されていた。
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忘却したものたちは、なまえをもたないものたちになる。なまえをもたないものたちは、やがて影になる。
○○が失われた場所では、それらはすべて、おなじものだった、
いくつものそれらがやがて動かなくなるのは。
みずうみのそばでは、時間が閉じていた。失われた場所では、まぼろしのように四角が積み上がりつづけ、時計はおなじように、まわりつづける。永久機関に似せたそれをつくった者たちは、もしかしたらとても、
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長くするつもりだったけど、ならなかったのでこちらへ。そのうちなんかにつかうやも。