とぷん、と、海にもぐる。
ずいぶんながいこと、海を泳いでいたから息継ぎを、しなくてもふかくまで潜れるようになった、
ふかくへゆけばゆくほど、気配はすくなくなった。水面のちかくでは、ゆらゆらと、
海の底にねころがって、水面にゆれるひかりを、ながめるのがすきだった、
うとうととしていると、懐かしい気配を、感じることが出来たから。
別のいきものの気配がしたときには、海の底をとおりぬけてまた、ひとつふかくへもぐった、
だいたい6回くらい、それを繰り返した場所でまどろんで、
はじめは、もぐればもぐるほど、懐かしい気配をつよくに感じた、
でもそれは、みっつめの海までだった。
それよりふかくでは、海のぜんぶに、まじっていた、
いつつめの海にいるひとたちは、すがたを地上とはかえていた、
そうしてここが、自分だけの海であることを、知っているみたいだった。
むっつめの海では、すがたではない、ものとしての、気配と溶けてゆく、のにも似たみず、のいろのあわいで、
だからゆっくりまどろんで、わたしの姿も、うみのいきもの、のものでは、なかったから、
うまれる場所と、かえる場所のことを、懐かしい気配が、いるはずの場所のことを。
みずのなかでくり返す呼吸は、うすいみどりいろで、
循環するように、
はんぶん、のまま、
ひかりに似た音で、
海につづくプールを、
さかいめで、
おもいだして。