すきなものごと

毎週金曜日、21:00更新。車いすダンサーです。HP:watername.net

うみ(短文)

とぷん、と、海にもぐる。

ずいぶんながいこと、海を泳いでいたから息継ぎを、しなくてもふかくまで潜れるようになった、

ふかくへゆけばゆくほど、気配はすくなくなった。水面のちかくでは、ゆらゆらと、


海の底にねころがって、水面にゆれるひかりを、ながめるのがすきだった、

うとうととしていると、懐かしい気配を、感じることが出来たから。

別のいきものの気配がしたときには、海の底をとおりぬけてまた、ひとつふかくへもぐった、

だいたい6回くらい、それを繰り返した場所でまどろんで、 

 

はじめは、もぐればもぐるほど、懐かしい気配をつよくに感じた、

でもそれは、みっつめの海までだった。

それよりふかくでは、海のぜんぶに、まじっていた、

 

いつつめの海にいるひとたちは、すがたを地上とはかえていた、

そうしてここが、自分だけの海であることを、知っているみたいだった。

むっつめの海では、すがたではない、ものとしての、気配と溶けてゆく、のにも似たみず、のいろのあわいで、

だからゆっくりまどろんで、わたしの姿も、うみのいきもの、のものでは、なかったから、

うまれる場所と、かえる場所のことを、懐かしい気配が、いるはずの場所のことを。

 

みずのなかでくり返す呼吸は、うすいみどりいろで、

 

循環するように、


はんぶん、のまま、


ひかりに似た音で、


海につづくプールを、


さかいめで、

 

おもいだして。