やまぶき、みどりいろ、群青、
目にうつるものひとつずつに、なまえをつけてゆく。
だとするならこれは、なに色だろうと、おもう、
うすいだいだいいろ、やわらかなおひさまのいろ。
さざなみのように、絶え間なくゆれつづけるもの、
背中からすっぽりと、くるまれる、ときに、
わたしはうすくまどろみながら、声のかたちをしたもの、が、とがったもの、を、研磨してゆくのを、感じた。
わたしのなかの「それ」はまだ、まえとおなじかたちでそこにある。
ちいさな、たまご型のそれは、殻にくるまれてまだ、「これ」をつくりつづけている、
だけれどさざなみ、は、それとはまるで、無関係に。
だいだい、むらさき、あお、とうめい、な、かがみ、
たちあがる、色彩の温度。だけれどたしかに、覚えているのは、
世界がゆれたときに、わたしはそのまま目を閉じた、
こんなに痛いのなら、もうなにもいらないとおもった。
のに、いまでもはっきりと、おぼえているのは、
足枷を、はめられたみたいに、
立ち尽くしたのは、
めのまえで、ちいさくちいさく、
なつかしい部屋。
さざなみ、が、ゆれている、
呼吸、には、色がついている、
空をみあげた、いつかの日を、
しずかに、弔うように。