すきなものごと

毎週金曜日、21:00更新。車いすダンサーです。HP:watername.net

かたちないもの(短文)

あたしは、かたちないものだった、


いろいろなものを口にして、咀嚼して、だけれど、かたちないもののままだった。


だからあのひと、に、ぱくり、と、口をつけて、

ひとつひとつ咀嚼した。ぜんぶを、知りたかった。


あたしはすこしずつ、かたちあるもの、になった、

だけれどはなれるとまた、かたちないもの、に、なるのだった。

みず、をのむのとそれは、おなじことだった、

それが、あのひと、にとってどういうことか、なんて、考えもせずに。


かたちないもの、に、なってしまうので、

また、ぱくり、と、口をつけて。

たくさんたくさん、のみほした。のみほしたら、言葉になった、

夢中になってくりかえした、だけれどはじめのとき、みたいに、ふかくふかくが満たされることは、もうなかった。


のみほしたものを、くみあわせて、編み上げて、すがたをつくった。

だけれど、水鏡のようなひとみ、は、すこしもゆらがずに、

そうっと殺そうとしていたものはただ、あたしのかたちを、していた。

自分がなにをしてきたのか、を、理解して怯え、て、


私は、私になった。

からだの輪郭をなぞると、それは液体ではなく気体でもなく、

ふかくふかくに、ちいさな世界が出来ていた。


ひとみを閉じると、液体が、波打つ、

いくつもの、記憶は断片で、身体はそれらを水滴のように、記憶していた。


感触の気配は、からだの輪郭をなぞらえて、

音もなく、重なり合って。ぱりりと、とろけるうみに。